映画『南京』だけでは真実は分からない

The Truth of The Nanjing of 1937.12-1938.2 via 【クッキーと紅茶と】

映画『南京』を引き合いに出して南京事件はなかったと言う人があとをたたないようですね。せめて、この映画を撮影した白井茂氏の証言くらいは参照してみてはどうかと思います。
こういう人たちって、どんなカメラでも限られた時間、限られた場所しかフレームできないこと、もし日本軍の暴行が映っていたとしても、いかようにも編集されること、そういう当たり前のことに理解が及ばないのでしょうか?

もし、映画『南京』に日本軍の暴行が映ってないから日本軍の暴行はなかったという主張が許されるならば、地下鉄サリン事件もなかったことにできてしまいますよ。実際、とほほさんが「地下鉄サリン事件はなかった」と題して否定論者がどのようなトリックを使っているかを実演なさっています。

南京安全区委員マッカラムは、カメラが向けられなかった場所でどういうことが行われたか、証言しています。

【南京事件資料集】マッカラム日記
1月8日
 四、五名の新聞記者が収容所の入口へ来て菓子や林檎を配給し、避難民へ若干の金銭を手渡した。そして活動写真が此の親切な行為を映写しました。
 同時に日本兵の一団が囲内の裏壁をよぢ登って来て十二人位の女子を強姦しました。取り消された写真は少しもありませんでした。
(別の訳文)

捕虜殺害を目撃した日本人カメラマン佐藤振寿も、その暴行を撮影できませんでした。

【南京事件 小さな資料集】佐藤振壽証言
 後で仲間にこの時のことを話すと、「カメラマンとしてどうして写真を撮らなかったか」と反問された。「写真を撮っていたら、恐らくこっちも殺されていたよ」と答えることしかできなかった。

冒頭でふれた映画『南京』の撮影スタッフはこの事件をこう語っています。

【戦史研究所】目撃者
 白井茂氏(映画「南京」の製作者)。
虐殺の現場は二度見た。一度はサクがあったように思う。はるか離れているところで、銃殺していた。数は憶えていない。揚子江でない川のところで、機関銃で撃っているところも見た。私なら抵抗すると思ったが、彼等は従順に死を待っていたようだ。川にとび込んで、向うに泳きついた者もいた。二百人ぐらいいたと思う。場所は憶えていない。

 藤井慎一氏(映画「南京」の録音技師)。
小さな川の傍の門の中で捕虜らしき者を撃っているのを見た。白井氏と一緒だった。いくつかの死体に石油をまき、火をつけた。中に生きている兵隊がいて"早く射て”と胸を指さし、"蒋介石万歳”といったので、大変驚いたのを憶えている。
 それ以外にも、銀行の裏で百人以上が殺されているのを見た。胸のあたりを銃剣で突いていたように思う。虐殺の噂はきいたように思うが、見たのはこの時だけである

【南京事件 小さな資料集】南京事件と報道規制
  中山路を揚子江へ向かう大通り、左側の高い柵について中国人が一列に延々とならんでいる。何事だろうとそばを通る私をつかまえるようにして、持っているしわくちゃな煙草の袋や、小銭をそえて私に差出し何か悲愴なおももちで哀願する。となりの男も、手前の男も同じように小銭を出したり煙草を出したりして私に哀願する。
 延々とつづいている。これは何事だろうと思ったら、実はこの人々はこれから銃殺される人々の列だったのだ。だから命乞いの哀願だったのである。それがそうとわかっても、私にはどうしてやることも出来ない。一人の人も救うことは出来ない。
 柵の中の広い原では少しはなれた処に塹壕のようなものが掘ってあって、その上で銃殺が行われている。一人の兵士は顔が 真赤に血で染まって両手を上げて何か叫んでいる。いくら射たれても両手を上げて叫び続けて倒れない。何か執念の恐ろしさを見るようだ。
(略)
 見たもの全部を撮ったわけではない。また撮ったものも切られたものがある。
(略)
 よく聞かれるけれども、撃ってたのを見た事は事実だ。しかし、みんなへたなのが撃つから、弾が当ってるのに死なないのだ、なかなか。そこへいくと、海軍の方はスマートというか揚子江ウォーターシュートみたいな板をかけて、そこへいきなり蹴飛す。水におぼれるが必ずどっか行くと浮く、浮いたところをボンと殺る。揚子江に流れていく。そういうやりかただった。
 戦争とはかくも無惨なものなのか、槍で心臓でも突きぬかれるようなおもいだ、私はこの血だらけの顔が、執念の形相がそれから幾日も幾日も心に焼付けられて忘れることが出来ないで困った。私は揚子江でも銃殺を見た。他の場所でも銃殺をされるであろう人々を沢山見たが余りにも残酷な物語はこれ以上書きたくない。これが世に伝えられる南京大虐殺事件の私の眼にした一駒なのであるが、戦争とはどうしても起る宿命にあるものか、戦争をやらないで世界は共存出来ないものなのだろうかとつくづく考えさせられる。

映画『南京』のスタッフ自身が虐殺を見たと言っているのに、その映画に映されてないというだけで虐殺はなかったと主張するのは、あまりにも滑稽です。

ところで、このエントリを書くために検索していたら、JOHN_VOIDさんの【南京事件資料館】が復活しているのを発見。これは思わぬ収穫でした。ほくほく。