医療費が高い理由

前回の対談の続き。

藤原「それから医療のことですけども、なんか本当に最近、お医者さんがいないから病院閉めますとかね、それもなんかあまり聞いたことがなくてですね。お医者さんいますよね、けっこう世の中にね。」


蓮舫「ただ、相当、いまお医者さん――とくに外科医、麻酔医、産科、産婦人科、小児科医は危機的な状況です。まだ内科医、あるいは脳外科とか、あるいは専門性が高いといいますか、町のお医者さんの内科医はなんとかがんばってくださっておりますけれども、ただやっぱり産科医の方、小児科医の方は、1週間のうちまるまる6日間、残業も入れて働いているという状態。3時間睡眠で手術にずーっと立ち会ってる状態なんで、劣悪な労働環境にあります。OECDのデータによると人口1000人あたりの医師数というのが日本は26位。30ヶ国中26位ですよ。2.1人しかいない。アメリカは3.1人いるんです。自由診療アメリカのほうが人口比に対するお医者さんが多い。で、さらにお医者さん1人が1年間に診ている患者数がフランスがだいたい2100人、イギリスが2500人なんですが、日本は7500人です。いかに1人の医師に苛酷な労働環境を押しつけて、医師の矜持によってわたしたちの健康が支えられているかというのを如実に現してる数字です。これは、これまでずっとときの政権は医師の数が余ってるって言ってきたんですよ。」


藤原「そうですよね。ずっとそう聞いてましたよね。」


蓮舫「まあバックにある医師会がこれ以上自分たちの聖域を荒らされたくないと思われた…。いろんな複合的な要因はあったかもしれません。で、彼らがいま、ずっと政治家がやって与党がやってきたのは、医師の数は足りてて偏在してるだけだって言ってたんです。東京にはいっぱいいて島根にはいないかもしれない。でも日本全国でならしたらいるんだ――。しかも、ならしたらいるって言って医学部の定員数はどんどん減らしてきて、そして病院は国立をどんどんなくして国からの補助金をなくして――それまでに出身校が医師の配属先を決めていて、なんとか医師がいないところにも医師がいるような制度を――これを取っ払って、医師が行きたいところに勤務できるような制度にした結果、ただでさえ少ない医師がどんどん人気のある病院だけに集中する傾向になって、結果、お金がなくて回らなくなって医師がいなくなって潰れる病院が出てきました。とくに市立病院、公立病院。いまきついです。経営が。


藤原「まず抜本的に、じゃあ今までの日本の医療はお医者さんの献身的努力によって支えられていたということなんですね。そのことについて国もみんなおんぶにだっこだったと。お医者さんもまあ権利もありますしね、意識も変わってくるし、いつまでも過剰労働、無理ですよね。これ直そうと思ったら、どうすればよろしいんでしょうね。」


蓮舫「まずはですね、医師の数を増やす。医学部の定員数をとにかく増やしていかなければいけない。ただ、お医者さまが育つまでには6年、あるいは臨床も含めて8年、10年単位でかかりますが、まずはいまお辞めになられている医者をどうやって減らすか。いま辞められている医者が一番多いのは女性医師です。とくに大学を出て医師になる確率が、いま、もう男性も女性も1:1。とにかく優秀な女性の医師がどんどん増えてきている。あるいは看護師もそうなんですが、医療従事者の女性が多くなってるんですけども、どうしても結婚して出産をするとこの労働環境では育児もできませんし――保育所ではとてもじゃないですけど――夜勤がありますし、夜の手術もありますので、子どもが預けられない状態で、医師が――、女性医師が泣く泣く辞めざるをえなくなっている。離職率がとても高いんですね。しかもお医者さまの世界ですと子育てをして2年3年経つと、その間に医療技術というのは目覚ましい進歩を遂げてますから、なかなか現場にすぐ戻れない。ですからここの離職率、復職対策をいますぐ講じる。病院すべてにまずは保育所を作る。育児休業、あるいは産休を取っている女性医師――男性医師でもいいんですが――おられた場合は、コンピュータでもいいですけれども最新の医療セミナーを、技術を学ぶことができるシステムを再構築して差しあげる。スキルアップをしながら子育てをして離職をしない、復職をしやすい環境を整えること。これはお金さえ流せばすぐできると思います。あとはとにかくその地方に病院をどのように整えていくかというときに、地方の――地域の病院の比較的軽い軽症を診てくれることができる病院と、少し重い病気を診ることができる中核病院と、それと高度な技術を持っていてその高度治療、難易度の高い手術にも対応できる治療の連携を、ネットワークを網の目のように張らせていく。それと救急医療もそこに乗せていって、救急医療の町とのシステムを――連携をつないで、そこに雇用を生みだす。医療スタッフです。いまはこの医師がこういうシステム設計とか、あるいは連携とかを電話とかでやってる時代ですから、ここに雇用を生みだして、ここにもやはり国が、地方がお金を流していくシステムで雇用を創出していくことが可能だと思っています。」


(略)


藤原「それから、やはりその医療費がね、毎年増えていくから減らさなきゃいけないという話がありますけども、医療費って本当に増えてるっていうか…。どうなんですか?」


蓮舫「いや、実はここもですね、医療費が毎年毎年10兆円単位で増えてるかのような伸び率、予想率を厚生労働省が出すんですが、情報は公開しません。まず、わたしたちが怪しいと思っているのは、あまりにも医療機器、医療器具、あるいは薬価が日本は高すぎます。これは欧米と比べて――たとえば心臓カテーテルといった器具ですね――10倍から15倍、価格が違います。まったく違います。たとえば胃カメラも含めてなんですが、確かに日本の技術は小さく、体に優しく負担をかけないものなんですが、それにしても価格差をみると5倍以上あるんですね。なんでこんなに高いかというと、審査をする機構が、実は複数その間にあって…。本来の開発費用と、その技術を開発したメーカーさんが売りたい価格――いわゆる希望小売価格ですが――、でもその間にいわゆるその医療機器ですから厚生労働省の認可を取らなきゃいけない。その審査をくくり抜けるための料金がどうやら高いんじゃないかと、わたしたちはひとつ疑ってます。」


藤原「そうなんですか。でもそれなんで公開しないんですかね。」


蓮舫「企業秘密、国家秘密という言い方もあるんですけれども、この審査機構になぜか天下りの役人がいる。もっと言ったらレセプトなんかもありますよね。日本の医療というのはお医者さまに診てもらって直接支払いじゃないですから――薬を、診療報酬を――薬の処方箋を書いてもらうと院内薬局、あるいは院外薬局で薬を処方してもらって、その処方した薬に対してのお金の自己負担率は払いますけれども、そのお金が直接病院に入ってるんじゃなくて、いちど診療報酬支払基金というところに全部のレセプトが回されて、審査を受けて――過大報酬、過剰請求がないかというのを審査を受けて、その厳格な審査を――許可を受けたら、見合うお金――レセプトに見合うお金――点数が決まってますから、それが医療機関に払われると。だけどこのレセプト支払報酬診療基金(診療報酬支払基金)の機構の委員長は、毎年、歴代、社会保険庁長官です。天下り先です。


藤原「そうなんですか。なんかこれはお手盛りをやってそうですねえ。」


蓮舫「こういう内部の不透明な見えない認可の手続きに携わる部分を全容解明させないと、天下り審査団体があって、そこにさらに天下りのファミリー企業があって、さらにもっと言ったら医療メーカーに天下っている構図が見えるんじゃないですか、というのを、わたしたちは何度も国会で追及はさせていただいてますが、この全容はなかなか明らかにしてくださらない。」