罪なき者よ、石をもって女に投げよ

むかし、優生思想という考えかたがあった。人間には優れたものと劣ったものとがおり、優れたものの子孫は増やし、劣ったものの子孫は減らす。それによって社会全体の健康を向上させるという思想だ。

とくに優生思想の強かったナチスドイツは、数多くの病人や障害者を抹殺してきた。ドイツだけではなく、日本やアメリカでも優生思想は強く、たとえばハンセン病患者の隔離などはこの優生思想に基づいているし、ひどいケースでは障害者が子孫を増やせないように性器切除などの断種手術も行われていた。

http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%84%AA%E7%94%9F%E5%AD%A6&oldid=7153974
http://inri.client.jp/hexagon/floorA6F_hb/a6fhb700.html
http://www.lifestudies.org/jp/yusei01.htm

たしかに、子孫を増やせないように断種手術するのは、殺すことよりもいくらか「まし」である。しかし、障害者に断種手術をした人たちが自分の優生思想を棚に上げて、ナチスの障害者殺しを非難する資格はあるのだろうか。断種手術をされてしまった障害者ならきっと「お前が言うな!」と言いたくなるだろう。

多くの障害者を殺したナチスは憎らしいが、むしろ、自分の罪深さをまったく省みることなく、十全の正義感をかざしてナチスを非難する人のほうに、私はぞっとするような寒気を感じる。

なんでこんなことを書いたかというと、猫の件。