川内康範さんの遺骨収集

【たけくまメモ】川内康範先生の想い出(2)

ずるいようですが、詳細はこの秋再刊される文庫本にゆずります。まあごく簡単に書くなら、先生には「病気除隊」して自分だけが生き残り、多くの戦友が死んだことに対する後ろめたさというか、贖罪意識があるわけです。その話をされたとき、先生は声をつまらせ、ふりしぼるように「俺は卑怯者だ!」と慟哭されたことが昨日のことのように思い出されます。

それから先生は戦後、作家・脚本家として活躍するかたわら、私財を投じて沖縄や南方で遺骨収集をされたのです。この活動に対し元陸軍大尉で戦後厚生大臣になった園田直が、先生の自宅にまで来て「本来は国家の責任でやるべきなのですが…」と直接感謝され、先生が政界との関係を深めるきっかけとなりました。

この遺骨収集活動に参加して先生を助けたのが、なんと当時日本共産党員で「喧嘩の竹中」「左翼やくざ」と呼ばれたルポライター竹中労で、彼はその後毛沢東文化大革命に絶望して共産党を離れ、さらに過激なアナーキスト無政府主義者)に転向したのでしたが、こういう人間でも「漢(おとこ)」と認めれば、右でも左でも分け隔てなくつきあうところが、川内康範という人物の底知れないところです。