抄訳をあてにするのは

【CRI online】「お金で雇われた」、ラサ暴力事件で破壊活動について供述 via 【maroon_lanceの日記】
「お金で雇われた」、ラサ暴力事件で破壊活動について供述
2008-03-22 20:42:52 cri

 ラサ市の暴力犯罪事件に参加した不法分子の供述によりますと、この事件は、ダライラマ一派が組織的、計画的、念入りに画策し、煽動したものであり、国内外のチベット独立勢力が結託した事件だということです。
 チベットの林芝地区のドルゥマは「チベット独立勢力がお金で雇ってくれた。指示に従って、破壊活動を行った。多くの物を壊し、火をつければ、もっと多くのお金がもらえる」と供述しました。
 また、主な犯罪者の一人であるナワンランジはラサで5軒の雑貨店を経営しています。店が雇っている6人に分裂活動をさせました。ナワンランジは「自分はお金を出し、仕事がなくて遊んでいる人を雇って、暴力犯罪事件を画策、煽動した」と供述しました。(翻訳:katsu)

たぶんこの記事を抄訳*1したものだと思うけど、その段階で微妙にニュアンスが違ってきてる。そもそも分量があまりに違いすぎてて、もともと2ページある記事*2をわずか3行に削ってる時点で、かなりの情報が欠落してるのは意識したほうがいい。

だいいち、もとの記事だと事件のあらましやその背景にあるものごとを総合的に語っていて、この容疑者の供述にしても騒動の背景にチベット独立派がいるのではという筆者の推測の根拠として引用されてるものなのに、抄訳版だとそういう文脈が省かれて金で雇われたことだけが主題としてクローズアップされてる。もとの記事とは供述に対する意味付けと重み付けがかなり異なってる。

もとの記事と日本語に抄訳された記事はまったくの「別物」なので*3、抄訳記事に依存して中国内部の言論のあり方をとやかく言っても仕方ないのではと思った*4。もとの記事は新華網に掲載された徐海濱*5という個人の論説らしいんだけど、そのことを知らず、これが中国メディアの事件報道だと思ってる人も多いんじゃないかな。

わたしは現代中国語はあまり読めないけど、それでもざっと原文をながめてみると、もとの論説記事の精密さは『新潮』『文春』に匹敵する水準だと思えた。

*1:http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%BE%B6%CC%F5&kind=jn

*2:しかもページあたりの文字数もかなり多い。ほんとうは全体で7ページあるけど残りの5ページは写真のみなので本文は2ページ。

*3:katsuさんが誤訳してると言いたいのではなくて、たんに内容も目的も違った別個の記事だという事実を確認しておきたいのです。要は、抄訳版は訳者の取捨選択を経ている、ということ。

*4:はてブで「リテラシー」タグを付けてる人とか、なんなの?とか思ったり。

*5:有名な人らしい。メディア出身の作家とかどうとか書かれてる。http://baike.baidu.com/view/542346.htm