産経の自衛隊評価はヘンだ

【Sankei Web】
サマワの新生児死亡率はこの2年間で3分の1に減った。陸自が汚れたユーフラテス川の水を浄水・給水し、医療支援を行ったのが一因だ。こうした成果は日本の誇りといっていい。

ひどいインチキ記事だ。
そもそもイラクでの新生児死亡率はそれほど高くはなかった。これが急増したのは湾岸戦争や「経済制裁」のため食糧や医薬品などが不足しはじめてからである。アメリカによるイラク攻撃が始まると、それは深刻さを極めた。アメリカ軍や自衛隊が進駐して占領政策を取り、新生児死亡率が下がったとはいっても、それは結局、自分で火を着けて自分で火を消す消防隊員みたいなものだ。それを「成果」などと呼ぶのは、「ぼく、自分で着けた火を自分で消したよ、すごいでしょ」と吹聴するようなもので、本当にくだらない。その間にもイラクの子供たちはずっと死につづけていたのだ。

http://square.umin.ac.jp/ihf/news/1997/0715.htm
http://square.umin.ac.jp/ihf/news/1999/0715.htm
http://www.geocities.jp/aobamil/kanchousitu/DUsono6.html

それに新生児死亡率の減少の理由を自衛隊による給水活動に求めているのも間違っている。すでに指摘した通り、不足していた食糧や医薬品が供給されていたのが大きい。むしろ、もともとあった水道設備を破壊したのがアメリカを中心とする多国籍軍なのだから、もし給水によって新生児死亡率が下がったと主張するならば、それまで新生児死亡率を高めていたのは水道設備を破壊した多国籍軍ということになる。

また自衛隊の給水能力を過剰に評価している。自衛隊は年間350〜400億円のコストをかけて1日あたり70〜80トンしか給水できなかったが、フランスのNGO"ACTED"は年間7000〜8000万円のコストをかけて1日あたり600〜700トンを供給した。給水量からいえばサマワ市民を救ったのはACTEDだと言うべきだ。費用対効果からいえばACTEDは1リットルあたり0.3円、自衛隊は1リットルあたり1370円である。イラクで殺害されたジャーナリス橋田信介さんは「地元の市場で輸入品であるネッスルの一・五リットルのミネラルウオーターを買いました。日本円で五十円でした。(略)つまり市場で買えば約二百七十万円のミネラルウオターの水が買える。でも日本の軍隊は約一億円かけて水をつくる」と批判している。またACTEDはその活動に際して現地でイラク人スタッフを雇用しているので失業対策にもなっている。日本の外務省はサマワにおける給水事業をこのACTEDに委託した。

http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Japanmilitarism/jdf_sending3.htm
http://www.ubenippo.co.jp/skiji/hashida/bababobo2003/2003_37.htm

どこをどう考えても、

サマワの新生児死亡率はこの2年間で3分の1に減った。陸自が汚れたユーフラテス川の水を浄水・給水し、医療支援を行ったのが一因だ。こうした成果は日本の誇りといっていい。

などとは言えそうにない。