南京事件の否定論者は3通り存在する

もう長いあいだ南京事件に否定的な人たちを観察してますが、否定論者はおおまかに以下の3通りの分類ができると思います。

A型
南京事件が実在したことを知りつつ、悪しき意図をもって「なかった」と嘘を吐いている人たち*1
B型
南京事件が実在したことを本当に知らず、悪しき意図をもってA型の主張に便乗する人たち
C型
特に意図があるわけではないが、A〜B型の主張をうっかり信じてしまった人たち

このうちC型の人たちを説得するのは実に容易なことで、ただ史料を挙げて事実を説明さえすれば、すぐに納得してくれるし、むしろ自分を騙した連中に憤慨して彼らに対する強力な批判者になってくれたりします。だからC型の人がどれだけ増加してもさほど心配する必要はありません。

またA型の人たちははっきり言って「びょーき」なので*2、説得しようとしてもムダ。その場で批判して反論不能に追い込んだとしても、批判者がいなくなってほとぼりの冷めたころにはまた同じ手の嘘を吐きます。しかし説得がムダなのであれば最初から放っておけばよく、C型の人がうっかり引っかかってしまわないように淡々とその詭弁を指摘しておけばよいだけの話なので、これもまた与しやすい相手といえます。

いちばん相手にして厄介なのがB型の人たちで、実証派が史料に基づいて事件を証明したあとで、A型、C型、どちらの道へも転がりうるんですね。うまく「中国の横暴は許せるものではないが、なるほど南京事件については史実と認めざるをえない」などと改心してくれればいいんですが、下手をうつとA型に「進化」してしまって医者でなければ救済できない場所へ追い込んでしまう危険があります*3。実証派はその点に留意しておくべきです。正しいことを言ってるだけなのに、否定論者のその後の面倒まで見てやらなきゃなんないなんて、やれやれだぜ。


南京事件の否定論者が近ごろ増えてきているとの印象を表明する人もありますが、私はむしろ目に見えるほど急速に減ってきているように感じています*4。振りかえれば、本宮ひろ志さんが著作『国が燃える』で南京事件に触れたり、東中野修道さんが関西のTV番組*5に出演して否定論を展開したりしたころなどは一番ひどかった。それにイラク紛争で数人の日本人が人質にされたときも、かなり絶望的な気分を感じましたね*6。そのころに比べれば、いまは断然マシです。

Apemanさんbluefox014さんゆうさんといった方たちの誠実な議論や史料提示が一番の要因でしょう。これによりC型の人たちのほとんどは否定論の正体に気付いて見切りをつけたし、また依然として否定的論調を堅持する人でも全面否定はついに断念せざるをえず、部分否定*7がようやくできる程度までに後退しました。くだらない否定論であっても、いちいち批判しておくことが必要だということです。そして批判するときには、相手のタイプによって対応を柔軟に変えることも重要です。

私は何もしてませんが*8

*1:「悪しき意図」には、中国人や「サヨク」を中傷して優越的な気分を味わいたいとか、いんちき否定本を売って金儲けしたいとか、いずれにしてもそういうよからぬことが当てはまります。

*2:おそらく比喩の域に留まらない。

*3:B型否定論者の多くはオフラインにおいてプライドを傷付けられる経験があり、オンラインにおいて誰かを差別中傷することによりプライドを回復しようとしているように見えます。実証派の説明の仕方によってはプライドの損傷を感じてますます意固地になり、実証派への報復心から故意の嘘吐き(つまりA型)に変貌するかもしれません。

*4:スパンをどれだけ取るかによっても違ってくるのですが。

*5:やしきたかじんさんの『たかじんのそこまで言って委員会』。よみうりテレビ東中野さんは典型的なA型の否定論者。

*6:南京事件否定論だけでなく、いわゆる「ネット右翼」が関心を持ちそうな話題の全てにおいての傾向です。否定論が巧妙になったとか説得力を増したということではなく、冷静な議論をしようとしても飛びかう怒号にかき消されるという状況でした。

*7:被害者はもうちょっと少なかったとか、あれは正当防衛だったとか、むしろ原因を作った中国の方が悪いとか、事実だとしても中国の宣伝は許せんとか、etc...

*8:だめじゃん!