デマはあるあるだけじゃない

あー、腹立つよなー。
掲示板で読売新聞の記事「賞味期限切れのあめ、富山テレビがつかみ取りイベント」が紹介されていた。フジテレビ系列の富山テレビが今年初めのイベントで賞味期限切れのキャンデーを配布したのだという。

それがどうした?

まるで富山テレビになにか過誤があるかのような書き方だが、私の見るところ、この記事からは富山テレビの過誤はまったく読みとれない。読売は、賞味期限の切れたキャンデーは安全性に問題があるから富山テレビを糾弾すべきだと読者に訴えたいようだ。しかし賞味期限は食品の安全性を保証するものではない。*1期限切れだからといって安全性が損なわれるわけでもない*2富山テレビの配布したキャンデーに安全性の問題はなかったのだ。

食品の安全性に問題がなければ事件性はない。事件性がなければ記事にする理由はない。しかし、読売がわざわざこれを記事にしたことにより、読者は、あたかも富山テレビが危険な食品を配布したかのように誤解させられてしまうだろう。

「デマ」という言葉はもともと民衆扇動のことを指していた。その真偽にかかわらず、一方的な情報を流して民衆の行動を思い通りに操ることをいう。

この読売記事がデマでなければ、なんだというのだろう。

件の掲示板でも、この記事に乗せられて富山テレビを誹謗する意見が書かれていた。そこで私が読売新聞のデマであることを指摘すると、「産経グループを擁護するのか、お前はネットウヨだろう」と来たもんだ。いくらなんでも、アホすぎるだろ。

賞味期限と消費期限はまったく別のものであって、富山テレビの配布したキャンデーに安全性の問題はないと言ったところ、なにをとち狂ったか、別の記事「チョコ菓子にガ混入、不二家工場は『害はない』と説明」を持ちだしてきて、「安全性に問題がなければいいんですか」などと当てこすりをしてきた。

不二家の件はよく知らないので判断しかねるが、少なくともこの記事からは問題らしきものは読みとれない。不二家の製造したチョコレートに蛾が混入していたので消費者が苦情を出したところ、工場長が「健康に害はない」と答えたのだという。

それがどうした?

この工場長は異物混入については率直に謝罪している*3。「健康に害はないから異物混入は当然だ」と言ったわけではない。消費者が「もし」と仮定したうえで「食べても健康に害はないか」と聞いてきたので、「健康に害はない」という事実をありのままに答えたに過ぎない。どこに問題があるというのか。もっとも、その言葉が事実であればの話だが。

この記事を読んだ読者は、まるで工場長が「健康に害はないから異物混入は当然だ」と言ったかのように誤認してしまうだろう。記者の故意であるかどうかは分からないが、とにかく誤読を誘う書き方だ。

なんと、これも読売記事なのか…。

読売新聞はこのように立てつづけに、食の安全性について誤解をふりまき、読者を煽動しようとしている。これこそデマ以外の何者でもない。『あるある大事典II』とどこが違うというのか。

読者の方も、こんなでたらめ記事を信じて不二家富山テレビを誹謗するとすれば、『あるある大事典II』を盲信して納豆を買いこむ消費者となんら変わりがない。煽動されてんじゃねえよ、たこ助!

追記「少々食べてしまっても健康に悪影響はありません。」

スポーツ報知の記事*4によると、不二家のチョコレートに混入していたのは「メイガ」だという。早速、検索検索。

【北海道立衛生研究所】食品混入異物
幸いなことに、これらの虫たちは、幼虫・成虫ともに毒を持っていたり人を刺したりすることがないので、誤って少々食べてしまっても健康に悪影響はありません。

衛生研究所員が「食べても健康に悪影響はない」と言っている。工場長の説明は事実に反するものではなかったということです。

さらに追記

読売記事「チョコ菓子にガ混入、不二家工場は『害はない』と説明」はてブから。

はてブコメント
2007年01月25日 xnissy news 害がないものを「害がない」と説明して何か問題があるのか?

【うさぎのえさ】コメント欄
正しいです
『蛾の混入については、当然あってはならない異物混入ですので不二家もお詫びに伺ったのでしょう。しかし、健康被害はないのか?と問われれば実際 害は無いですから「害は無い」と回答するのは当然かと思います。食品異物で人体に高い危害が及ぶのは、金属・ガラス・プラスチックなどの硬質異物です。視覚的感覚的な事情を除いては、虫はそういった意味では害は無いですよ。(某食品メーカー工場/品質管理係)』

【三十六計不如逃】
こんなん、他の会社でもしょっちゅうおこってるんじゃないの。

ていうか、謝罪の後にこの説明があったんでしょ?不二家が「害あります。すぐ病院行ってください」って説明しても、ガをスルーしてても、いちいちニュースになったんだろうな。。

そう、工場長は異物混入については謝罪しているし、害のないものについては率直に害がないと事実を述べているだけ。どこにも非難されるべきところはない。

【弁護士 落合洋司(東京弁護士会)の「日々是好日」】
上記のような対応も含め、この会社で発生した数々の不祥事を見ていると、不特定多数の人々に食品を提供してはいけないレベルにまで墜ちてしまっている、という印象が、ますます強くなってきます。

あなた、本当に弁護士ですか?異物混入そのものはともかく、健康に害のないものを健康に害がないと説明することのどこが「不祥事」だというのか。これは名誉毀損にあたらないか、自分自身で検討してみてはどうか?

*1:実はあのエントリは、読売の富山テレビ中傷を知り、このまま放ってはおけないと思って書いたもの。

*2:逆に、保存方法が適切でなければ期限内でも安全性は損なわれる。

*3:私はこれについても謝罪の必要がないと考えるが、商売人としてはごくありふれた判断だろう。

*4:一見すると読売記事より詳しいように見えるが、よくよく読むと、問題の発言が、工場長が消費者宅を訪れて謝罪したおりのことであることが伏せられ、また工場長の肩書が「担当者」に化けている。読売よりも記事の精度は低い。