どうしようもない免疫のなさ

【Yahoo!ニュース】「三角形は一つの曲線と二つの曲線に囲まれる」??あきれた教師、分限免職 (はてブ)*1

ここで一人の「あきれた教師」の「トンデモ授業」がやり玉に挙げられている。しかし、「トンデモ」の中身を見てみると、どうも怪しい。これを書いた記者は当事者である教師の言い分はまったく聞いてない。大阪市教育委員会の「調査」を鵜呑みにして、ウラを取らずに記事にしたてあげているだけなのだ。ここで「トンデモ」と呼ばれている行為は、市教委がかなり強引にこじつけているように思われてくる。

分限免職」(クビ)というあまりに厳しすぎる処分をくだしたにしては、その口実はあまりにくだらなすぎる。こんなくだらない口実でも、お上にたてつく教師は処分できるし、世間さまも味方してくれるってわけで、市教委の人たちも思うぞんぶん仕事ができるってわけだ。もしかしたら、みんな「校外研修」ってのを文字どおりの研修だと思ってるのかもしれないね。

上は北、下は南
地図の読みかたを説明するさいに言ったとされる。しかし、とくに方位が明記されていない場合、現代では上を北と見るのが慣習である。説明不足だとは言えるかもしれないが、目くじらを立てるほどの間違いだとは思えない。それにしても、この記者や市教委は「北上」「南下」という言葉にどういう態度でのぞむのだろうか。
山陰の陰が書けない
この教師は中学校で社会科を教えていたという。特別支援学校に転属してからも社会科を中心に教えてきたのだろうと思われる。国語の授業で「山陰」という言葉がそうそう出るとも思えず、十中八九、日本の地理について教えていたときのことだろう。「陰」という字には、旁を「長」と書くバリエーションがあるが(「隂」)、おそらくこの教師もそのような異体字を用いたのではないか。木曾を木曽と書いたりカムチャツカをカムチャッカと書いたり一ヶ月を一ヵ月と書く人もいるが、だからといって他人にとやかく言われたという話はきかない。常用漢字を使うべきという主張は理解するが、国語の授業でないときに異体字を用いることがそれほど問題だったのだろうか?
三角形は一つの曲線と二つの曲線に囲まれる
ユークリッドなら間違いだが、かれは社会科の教師である。たとえば、地球儀を指さして、東京、ニューヨーク、パリの3都市を線でむすびながらの言葉だとすれば、それほど間違った説明ではない。球面上に書かれた三角形は、各点をむすぶ「直線」(最短の線分)が曲線になる。3つの曲線と言わず、なぜ1つと2つの曲線と言ったのかが手がかりになる。おそらくそのうち1つは赤道の一部を切りとったもの、残りの2つは経線にそって北極点で交わるものを指していたのではないだろうか。
経線をかけせんと読んだ
ささいな言い間違いにすぎない。おそらく経線→罫線→かけせんと連想したものだろう。社会科の教師であるから経線の読みを間違えることは、「陰」を常用漢字で書けないことよりは問題である。しかし、このようなささいな間違いはだれにでもある。国語の教師が「十中八九」を「じゅっちゅうはっく」、「間髪を入れず」を「かんぱつをいれず」と読んでしまうことも珍しくないというのに。
パソコンの授業で不的確な指示
パソコンのできない教師など掃いてすてるほどいるだろう。そもそもそれが教師に求められる資質なのか?1人の教師がさまざまな教科をかけもちしているのだから、複数の教師がそれぞれの得意なことを分担してやればいい、それだけの話だ。
前年度分の教科書を発注した
だれにでもあるうっかりミス。いちいちとがめるようなことではない。ところで、なぜ受注した側は気づかなかったのだろうか?そのあたりも考慮に入れておく必要があるんじゃないだろうか。

くさいねえ。おそらく、ウラを調べたら、なにか出てくるね。きっと、ぼろぼろ出てくるだろうなあ。

こんな一方的な宣伝を鵜呑みにして、うれしそうに教師を非難してる場合じゃない。記事そのものがみずから証明してしまっている報道のいかがわしさにみんな気づくべきだよ。

*1:はてブのタイトルを見れば分かるとおり記事の見出しが途中から変わっている。わたしが最初に見たときは「『地図の上は北で下は南』??あきれた教師、分限免職」だった。