司馬炎

武帝紀を通して読んだことがないので、どういう人柄であるか分からなかったんですが、諸葛恢伝、石苞伝を読んでみて、なんか変な人だなぁという印象が先行してしまいました。


石苞というのは忠実で有能な武将だったんですが、反乱を企てていると讒言されてしまうんですね。で、司馬炎は石苞を疑うようになる。息子の石喬を呼んでも出てこない。「さてこそ」と思ったらしく、石苞を任地から呼びかえして一族皆殺しにしてしまおうと考えるわけです。

ところが石苞が一人でのこのこ自首して出てくると、すっかり気を許してしまう。「こいつが謀反など大それたこと考えるわけがない」と思ったか、すぐに許してしまって大臣に復職させちゃうんですよ。で、あのとき呼んでも来なかった石喬のことを「あなたの息子はあなたの家を潰してしまいますよ」なんて石苞に言っちゃう。いやいやいやいや、潰そうとしたのはアンタですから!っていう。


それと諸葛靚ですよ。もともと魏の武将諸葛誕の息子で、司馬炎とは竹馬の友という間柄。諸葛誕が反乱を起こして司馬炎の父司馬昭に殺されたので、諸葛靚は呉に仕えて重臣になります。司馬炎が魏を継いで帝位に登り呉を滅ぼすと、諸葛靚は父を殺した司馬氏を恨んでいるので、司馬炎の招きにも決して応じない。

そこで司馬炎は、諸葛靚が姉を訪ねていったとき、いきなり部屋に押しかけて諸葛靚を驚かせてしまう。諸葛靚が逃げていくのを追いかけて、「やあ、ようやくお会いできましたね!」とか言っちゃったりするわけですよ。それでむりやり酒の席に誘って仲直りしようとしたけど、諸葛靚がめそめそ泣くもんだから白けちゃって逃げだしたというお話。いやいやいやいや、自分の父親が相手の父親を殺してるんだからそりゃそうなるでしょうよ!っていう。


一言でいうと自己チュー。自分の行動が相手にどう影響を与えているか、相手にどう思われてるか、まったく想像できない、みたいな。そういう人物像がちらついちゃってどうにもかないません。