ダライ・ラマの亡命政府?

【駄文】チベットで暴動より孫引き

中日新聞』共同配信
インド北部ダラムサラに拠点を置くチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の亡命政府は16日、ラサ市内で少女5人を含む80人の遺体が確認されたと記者団に明らかにした。

東京新聞
デモ行進は中国からのチベット独立を求める五団体が主催し、十日にチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ十四世の亡命政府があるダラムサラを出発。

ダライ・ラマチベット亡命政府は政治的意見において対立関係にあるのに、なぜそれを同一視する説明ができるのか……?亡命政府は独立を望んでいるが、ダライ・ラマは「高度な自治」を求めているだけで独立を望んでいるわけではない。

亡命政府が死者80人と発表しているにもかかわらず、ダライ・ラマが調査団を現地入りさせて死者数を調べよと言っているのは、ダライ・ラマが亡命政府の発表をある意味で信用していないからだ。

チベット亡命政府は意見対立がありながらもイデオロギー上の理由からダライ・ラマを推戴しているし、中国政府もチベット独立運動を影から主導しているのはダライ・ラマだと決めつけている。これはちょうど戦前の昭和天皇が本来の意図でないにもかかわらず、アジアへの勢力拡大を目指す軍部にその名を利用され、一方、中国など侵略された側には昭和天皇が主犯と見なされたのと似ている面がある。チベット亡命政府と中国政府の双方が、ダライ・ラマの名を政治利用しているのである。

また、中国に暮らすチベット族は、亡命政府の独立志向を支持する者、ダライ・ラマ自治志向を支持する者、中国政府の統治に満足する者、いずれにも与せずとにかく平穏な暮らしを望む者と、さまざまに意見が分かれているはずなのに、なぜそれを一緒くたにして中国政府vsチベット族という二項対立の構図で説明できるのか……?ましてや、今回の事件の発端となったチベット族のデモ隊については、亡命政府ですら批判的なのだから、チベット族が一枚岩でないことは明らかなのだ。

ダライ・ラマチベット亡命政府を同一視することは、チベット亡命政府と中国政府の主張をともに補強し満足させ、ダライ・ラマの意思を踏みつけにすることになるし、この事件を中国政府vsチベット族という二項対立の構図で捕らえることは、現実のチベット族の多様な意見をないがしろにすることになる。

この手の記事は、それを書いた人がチベット問題をよく分かってないで書いてるので、記事としての品質はかなり低いと見たほうがいいと思う。チベット問題についてまったく知識も関心もない、わたしでさえそう思ってるんだから、そうでない人ならみーんなとっくに分かってると思いますけどね。

追記

はてブでhit-and-runさんやhagakurekakugoさんより、チベット亡命政府は独立を求めていないという指摘がありました。

そもそもこのエントリで断ってるように、わたしはチベット問題について関心も知識もなく、ここで書いてることは10年くらい前に聞きかじった古い認識にもとづいてるので、たぶん間違い勘違いは多々あると思ってますが、しかしそれにしてもそういう密度のうすいエントリに30以上のブクマが付く現在の状況、それこそがチベット問題がいかに周知されているか或いはされていないかを如実に表してるような気がします。

んで、チベット亡命政府ダライ・ラマ国家元首と仰いでおり、本心はさておき、公式にはダライ・ラマの見解に反することは言えないという事情があるわけです。ダライ・ラマにしてもチベット亡命政府にしても、もともとは独立を求めて運動していたわけだけど、80年ごろから高度な自治を求める対話路線に変更したという経緯があって、それについてはダライ・ラマと亡命政府の内閣要人のあいだで認識や感情の行きちがいがあるという観測も10年くらい前にはけっこう普通に聞かれたように思うんですね。いや、聞きかじりだけど。ただ最近、内閣人事の刷新が行われて、ダライ・ラマの方針を尊重する姿勢がより強まったかもしれません。けど、これもよく知らない。

さらに追記

というか、こんな糞エントリにブクマする暇があったら、さっさとダライバートルさんのYahoo!掲示板投稿履歴を読んだほうがいいです。わたしがここで聞きかじったと言ってるのも、大半がこの「チベットの歴史について」スレッドの内容からなので。なんと、これだけの情報量がありながら、ブクマがたったの1コも付いてないという奇跡的なもったいなさ!