葛藤がないね

【福耳コラム】ケーキを売ればいいのに

有限のリソースを有効に使っていくのはよろしいんですが、そもそも人命だとか権利だとかは計量したり交換したりができるような性質のもんではないんですね。助けたくても資源が足りないというときに常人は葛藤を感じたりするもんなんですけど、まああっけらかんとしたもんですわ。こういう人にかかっちゃうと、前回エントリのリンク先で指摘されてるナチスドイツの合理性みたいなもんで、そのうちどっかの子どもを1人誘拐して殺して臓器を切りとって他の10人に移植してハイハイ全体の最適全体の最適とか言いだしかねない。テロリストは人質ごと爆殺とか。まあ確かにそっちのほうがはるかにお手軽だと思いますよ。駅の改札もハサミも右利き用で作れば最適ですしね。それにしても全体の最適のために個人性を抹殺するのが全体主義というもんでなかったかな。

あっちにもリソースが必要、こっちにもリソースが必要、しかし両方に割けるほどリソースに余裕はない。そういう虻蜂取らずなディレンマの状況にいかに対応してくかがマネージメントの出発点であり目的というもの。一方を切りすてるなんてのはサルでも思いつくような安直なあるいは浅はかな考えであって、そんなものにマネージメントと称する価値はない。マネージメント性のかけらもない。ディレンマそのものから目を背けてるだけなんだから。「どちらか片方を切りすてることができないとき、あなたならどうしますか?」と問われて、「片方を切りすてます!」などと得意満面に答えてたら、こいつバカかと思われるのがオチだろうし、そういうアホな発言ができることでオレって格好いいとか満悦してたら、そりゃ間抜け以外のなにもんでもない。

で、自説が批判されると批判内容そのものに答えず、おそらくは自己イメージを相手に投影してるんだろうけど、あいつらはルサンチマンのヒロイズム、逆上して足を引っぱるタイプとラベリングしただけで批判を無効化できたつもりになっている。みずからは葛藤の克服を豪快に回避しつつ他人の葛藤は思考停止だと断ずる。そういうのが学者と称して世間に役立ちたいとか言っているんですよ。マネージメントを逃避するものがマネージメントを語るという。すごいなぁ、日本。

いやー、とりあえず、いま自分に向けられてる批判の矛先をマネジメントしてみたらどうでしょ?

ホンモノだったみたい

いや、だれしも思いこみとか言いまちがいとかあるわけで、学者や専門家といえどもそれを免れることはできない。なので、そういう些細な間違いをいちいち糾弾するつもりはないんだけど、かのエントリはそういう水準のしろものでないことが露呈してしまった。

後日付記:わたくしのこのエントリーを「葛藤がない」と批判されている方がいるようですが、その方は巧妙にも(?)、こちらにTBを送っていらっしゃいませんでした。(こちらで拒否したり抹消したりしたわけではありません。)ブクマコメのたかだか百字の言い捨てはともかく、ひとつのエントリーとしてご批判をして下さるなら、こちらはできるだけ対応しようと思います。ですからどうかその方は、こそこそ物陰で憶測で人の意図を捏造してその虚像を攻撃するのではなく、TBを送って堂々とご批判頂ければ幸いです。

まあ、TBを送ってこないということが、理由がおありなのかも知れませんが。

なんじゃこりゃ。

こっちにはまだかれからのTrackBackは来てない。「理由がおありなのかも知れませんが」などと「憶測で人の意図を捏造してその虚像を攻撃」するヒマがあったら、こちらへTrackBackをうち、おのれの読者をこっちに寄こしたらどうなんだ?みずからの主張をみずから否定するのはどうしてなんだぜ?

というわけで、どうやら「ガチの人」だったらしいと、わたしのなかで評価が定まりつつあります。

わかりやすい

当初は「驚いた」「初めてのこと」「なぜこうなるのだろうかわからない」と感情をもつことそのものを拒絶していたのに、「「戦略決める人」が一般人の視点、感情を理解した上でわかりやすく納得できる形に噛み砕いて説明できれば」「学生さん相手なら、「かわいそう」→「自分ならこうする」を考えるように仕向けるのが先生の仕事なのかなぁ、と思いました」と指摘されるや、とたんに前言をひるがえして、そう問いかけた、そう教えるつもりだと言いはじめた。

「「想像もできないことが世の中にあるんだなと勉強になります」←「ナイーブ」と言うならこれが一番ナイーブでは?」と指摘されるや、途端に皮肉のつもりだったと言いはじめた。

最初は提示してなかった状況説明と自己の見解があとからあとから追加されていくゥ!

まだ理解できない人がいる

2008年05月23日 NOV1975 社会 葛藤してればドラえもんが助けてくれるんだな、きっと。
2008年05月23日 REV 大規模災害の際の管理者向けマニュアルからトリアージを省き、マネージメントとか葛藤と書くといいわけですね。わかります。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/mujin/20080523/p1

このエントリを読んで、トリアージを否定しているだとか、葛藤すれば解決すると言ってるだとか、そういうふうに読みとっちゃう人がいる。どこをどうやって読みとっちゃったのか知らないけど。

わたしが言ってるのは、ディレンマを回避することはディレンマの克服ではない、それはマネージメントと呼ぶに値しない、ということなのに。

こういう人に現場の指揮を委ねてはならない

「旅順に敵の要塞があります。これを期間内に攻略したいですが、強攻すれば将兵の損耗は避けられません。あなたが指揮官ならどう采配しますか?」という問いが投げかけられたとき、安直な回答としては、

  1. 損失覚悟で強攻する
  2. 攻略を諦める

などということは、だれでも思いつくわけですね。だれでも思いつくけど、名だたる将官たるものが気軽にホイホイ採用してよいものではない。そんなのは作戦と呼ぶに値しない。

でも、かの人はいともやすやすとそれを採用してしまう。乃木希典よろしく勝算のない突進を繰りかえして将兵を無駄死にさせる。結果として要塞は占拠できるだろうが、あとで本営から損耗の責任を問われて、

(・3・)< だって兵士を諦めないと攻略できなかったんだもーん。仕方ないじゃーん。

とか言ってる。それは作戦ではない。問題解決を放棄しているだけだ。強攻は避けられないにしても損失を最小限におさえる努力はしたのかと問われて、

(・3・)< いや損失を避ける努力はしたよ?わかんなかった?実はしてたんだよ?

などと後付けの言い訳をする。嘘を言うんじゃない。だったら、なぜ最初に問われたときそれを言わなかったのか。そんなのが教官として教鞭をとってるなんて悪夢としか言いようがない。

要は

【身・技・態(浩坊拾遺)】それはそうなんだけど
ここで実に興味深いのは、その落とし処です。この卒論では、大のためにあるていど小の犠牲は仕方がない、的な「まとめ」をしてしまうのです。そりゃそうだろうねぇとしかコメントしようがない「まとめ」です。せっかく異なる視点それぞれについて、論法やら論拠やらを丁寧に分析しているのに。そして鳥の眼/虫の眼それぞれお互いの論拠が、基本的に噛みあっていない点が面白いのに・・・・・・

でも、(福耳さんの例示した学生のように)「かわいそうだ」と反応するのも、(ウチのゼミ生のように)「まぁしょうがないんじゃないの」と反応するのも、じつのところコインの両面なのです。こちらがしっかりと伝えたい=鍛えたいのは、その反応をいきなり出すことじゃなくて、そこへと至るまでに論証をしっかりと積み上げることなんだけどね。

こちらのエントリでも指摘されてるけど、「落としどころの模索」という一番むつかしく、面白い部分をネグレクトしてるってことなんだよ。

マイケル・パレに殴られるぞ

これはもう全くそのとおりな指摘。

2008年05月23日 font-da 極限状態でトリアージって、ほんま死にそうになんで。阪神・淡路大震災後、消防隊員はめちゃくちゃトリアージによってPTSD発症したっちゅーねん。それでもトリアージせざるをえん、っていうのがミソの話でしてよ、
http://b.hatena.ne.jp/font-da/20080523#bookmark-8689179

マイケル・パレが主演したB級映画に、タイトルは忘れましたが、パレの演じる空軍パイロットの養成所に、映画俳優が「軍人の役柄をつかむため」として体験入学してきてパレに張りたおされるというシーンがあるんですね(まあパレもほんとは映画俳優なんですけど)。本当の戦いを知らぬやつが分かったふうな口をきいてんじゃないと、そういうことですよ。

かのオレオレ学者さんはなんか得意げにトリアージトリアージ言ってますけど、現場の矛盾、現場の葛藤をほんとうに体験してる消防隊員や自衛隊員にその様子が見つかっちゃったら、ぶん殴られちゃうんじゃないかっていう予感があるんですね。見捨てられる者の悲痛、あえて見捨てざるをえない者の悲痛を、お前はほんとに分かってんのかと。それが分かってる人間がああもあっけらかんと自慢げに語れるものかと。その辺がひじょーに疑わしいと思うわけです。

TrackBackの件

【あの頃の僕らは胸を痛めてブギーポップなんて読んでた】
TBを送る、送らないというのは書き手の自由だ、というのが自分の認識なので、この記述はびっくりした。
勿論、言及先のエントリの内容を批判するのは自由なのだが、少なくともTBを送らないことで、

こそこそ物陰で憶測で人の意図を捏造してその虚像を攻撃するのではなく

などと言われる理由はないはずだ。

【見ろ!Zがゴミのようだ!】
TBは「関連情報へのアクセスの向上」が目的であって果たし状じゃありません!
TBを送らない言及を「こそこそ物陰で」というのは斬新すぎる。Web上に十分公開されてるのに。
というか気付いたんなら自分からリンク貼ればいいだけじゃね?

わたしはTrackBackについて対象エントリの読者にエントリの「続き」を読ませる機能だと思ってるので(それは補足情報だったりするかもしれないし、事実の訂正だったり批判だったりするかもしれない)、別に読ませるほどの「続き」じゃねえやと思ったらTrackBackは打たない。

でも、「批判するならTrackBack必須!」という人は以前からちょくちょく見かけてたので、今回のことで特にびっくりしたりということはなかったなぁ。それよりも「批判するならTrackBack必須!」と言ってる当のご本人が、自身の言動にまったく矛盾する態度でこちらに応対したことのほうがノケゾリ度が高かったですよ。

torinさんからは別途ご批判をいただいてます。

ごもっともな指摘の件

【見ろ!Zがゴミのようだ!】具体例を出さないまま比較するのは俺の最強超人論と同じ

これはまったくもっともな意見。

ただ、わたしがこういうことを言いはじめたのは、「その方法では解決にならない、解決する方法を提示せよ、自分は解決する方法を知っている」ということではなくて、「それは矛盾の解決ではなく逃避にすぎないんだから、それでは専門家を名乗る資格はないよ」ってことなんですね。かりそめにも相手は専門家を称しているわけで、その専門家としての能力に疑問があると言ってるわけなんですけど、「それじゃあお前が対案を出してみろ」と言われても、それはちょっと困っちゃう。わたしが言ってるのは安直な解法(というか逃走)に逃げこむなということなので、それじゃ今すぐ解法を提示してみろ、と言われたら、おれの話ちゃんと聞いてた?って思ってしまう。

というか、そもそも、かれの提案するソリューション自体に異論はないので、さあ反論してみろと迫られても、いや別に反論はないです、としか言いようがなかったりして。

ややや

TrackBack送れだの何だのと言ってた箇所が削除されてる。これから直接対話しにこっちへ来るんだろうか。それなら別におかしなことではないけど。男子より女子のほうがなんやかや言ってたミソジニーくさい部分も消えてるし、この人、万民にウケのわるい突っこまれポイントをひっそりと消しちゃう人なんだね。わたしもこのエントリを書いてからちょくちょく修正したりはするけど、論旨にかかわる部分でそんなことはしないよ。

TrackBack元のコメント欄でいろいろ言い訳を書きまわってるけど、そのたびに新たな状況説明が追加されてって、当初の主張からは似ても似つかぬ無難な路線に修正されつつある。とりあえず極論暴言をぶちあげといて後でひっそり修正して瑕疵を埋めてく戦術を採ってるのだろうか。謎めいた振るまいだ……。

レイヤー読めてない人が多いなぁ

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/fuku33/20080522/1211444127
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/fuku33/20080522/1211444127
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080523/p1
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/toled/20080523/p1

福耳ちゃんのトリアージを支持してる人には、批判者に対して「あいつらは"かわいそう"などという稚拙な感情のみを根拠にトリアージを否定しているゥ!」と信じてるらしく、あさっての方向に吠えたけってるような人が多いような印象。関連エントリにもはてブにもそんな意見者はいないのに、1コ下のレイヤーでくすぶってる。あなた周回遅れですよ、と教えてあげたい。

2008年05月23日 rAdio 議論のレイヤーがずれてるっぽい。ある種の「メタ vs ベタ」とも言えそう。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/mujin/20080523/p1

rAdioさんはその辺のレイヤーのずれに勘づいてるけど、はてスタ打ってるkiku-chanさんはたぶん何がどうずれてるか分かってないような気がする。