喜怒哀楽

東京メトロのマナーポスターは、なにを訴えんとしているかが分かりやすい、宣伝としてはかなりよくできてるポスターだ。もっとも訴えの内容はくそみたいな内容だけど。

だけど、この作品だけは最初、なにを言いたいのかよく分からなかった。要は、車内で電話をするな、ということなんだろうけど、各フレームの右上に1から4までの数字が振られている。この数字の意味がとっさには分からなかった。はて、この数字は……と思って見ているうちに、ああ、これはその順番で見れば「喜怒哀楽」になってるんだなとようやく了解した次第。そこに気付くまでに30秒近くもかかってしまった。作者の意図をただちに知らせるという意味では、これは意見ポスターとして失敗作だろう。そもそも「喜怒哀楽」に沿って表現する意図がいまだに分からない。

喜怒哀楽。みなさんお好きですね。その割には、みなさん「喜」と「楽」の区別がお分かりでない。件のポスターもどちらも似たような笑顔で書かれていて、とくに区別している様子は見られない。違いが分からないのに、口にするのだけは好きなんだよなぁ。その字の違いが分からないということは、喜ぶという言葉と、楽しむという言葉の違いが分からないということになるんだけど、日本語の話者としてさすがにそれはどうなんよという気がする*1。どちらも笑顔に通ずるからその辺で混同が起こってるんだと思うけど。

その辺のずれに対する無自覚って、ここいらの話に関係しそう。

*1:純然な日本語だと思ってたけど漢籍に由来するんだねー。知らんかった。漢籍での文脈なら「楽」は楽しむじゃなくて安楽の意味だろね。