村人が善良だという誤認識が生むもの

治安の悪化は本当か?――つくられたモラルパニック via 【カマヤンの虚業日記】

先日の「世界一少年に厳しいデータ」が依拠している浜井浩一さんの講演です。

 犯罪報道と実際の犯罪の関係をみると、実際の殺人の認知件数は緩やかな減少傾向にあるのに、殺人に関する報道の件数はどしどし上昇している(図5)。犯罪の不安を何によって感じるか調査してみると、54・1%と最も多かったのが「新聞やテレビの犯罪報道をよく見る」とあげている。「少年による犯罪は増えたと思いますか」という質問に「非常に増えている」と回答した人の比率では、「あなたの街では」が13・5%、「世の中全体では」が62・5%である。身近なところではあまり聞いたことがないが、報道を見ると少年犯罪が増えていると感じる、ということだ。

世の中全体で少年犯罪が非常に増えているというのは、新聞やテレビによる誤った印象に基づいています。しかし自分の身近では現実の犯罪体験がないのですから、自分の街では少年犯罪が起こっていない、しかし世の中全体では少年犯罪が増えているという認識につながります。それは「おらが村の村人は善良だが、よそ者は悪党だ」という、いびつな社会観を招くでしょう。自然、よそ者に対する疑念や敵意を強めていくことになります。ゼノフォビアです。

また、村外からの移住者や旅行者、外国人だけでなく、ほかの村人と違った考えや行動をする村人さえも、よそ者と見なされます。少年、病人、障害者、働かざる者、信仰者などです。自分がよそ者でもなく、その加担者でないことを証明するために、村人はほかの村人と同化せざるを得ません。ファシズムです。

メディアが治安悪化を実態以上に強調することによって、必然的にその社会は排外的になり、全体主義的になります。