頭のよすぎる問題

言ってないことが言ったことにされたりする問題。


頭がよすぎるから、「あいつはこう言った。それはこういう肚があるからに違いない!」と先読みしてひとりで反発している。そんなこと誰も言っていないのに……?

一を聞いて十を知る利発さはこういう弊害を持っているので危険だとつねづね思っている。

よく手品にかかわる言葉で、いぬを誘導トリックにかけることはできない、という文句がある。次はこうなるだろう、裏はこうなっているだろう、と予測し、想像する能力がないからだ。人間はそれができる。だから、手品師はその予測や想像をうらぎることができる。人間の知能の高さが逆手に取られているのだ。手品師に裏をかかれないためには、予測や想像に頼ることをひかえて、ありのままの事実を見ることが大事だ。

一を聞いて一しか知ろうとしない覚悟。

諸問題に影響するか*1

このエントリに「メディア」タグを付けているのは、この問題が、社会のあらゆる問題に影響しているか、あるいはその根源になっているのではないかと疑っているからだ。とくにマスメディアの影響が大きかろうと思っている。

先読みはとりわけ「空気を読む」という言葉につよく関連しているはずだ。そこでいう「空気」とは暗黙の(結論というよりはそれ以前に)論点である。暗黙の論点は、だれもそれを明言しないからこそ、だれもその提起について責任を取れない。というよりは、むしろ責任を取りたくないからこそ明言しないのだろう。空気を読めずわざわざ口に出して言ってしまう奴は「バカ」なのである。バカは責任を恐れず、利口な人間は責任を回避する。そこに「頭のよすぎる問題」がある。

守りたいものがある

ある南京事件否定論者が掲示板で事件にまつわる面白いエピソードを語っていたので、その話の出典を聞いたところ、かれは何を思ったか「ソースの粗を探してこの話をむりくり否定したいんだろうが…」と言い、なんど聞いてもかたくなに出典を教えたがらなくなる、ということがあった。こちらの心中を詮索してありもしない意図を警戒しているのだ。この状態になると、こちらがどう呼びかけても、向こうには「なにか裏があるに違いない!」としか見えていないので、もはや対話は不可能になってしまう。そのエピソードの出典はいまだに聞けていない。

かれには南京事件の否定について反証されたら困る、という弱みがあった。それが、このエピソードが反証の糸口に使われたらたまらない、という警戒につながっている。そうしたかたくなな態度の背景には、なにか別の「守りたいもの」が存在している*2

論点の先読み

ひとつの論点についてその後の展開を先読みするというだけでなく、論点そのものの所在を先読みしてしまう傾向が見られる。

【自由帳で数学とか物理とか】「何故迎撃しなかった?」も「迎撃は北朝鮮への宣戦布告」もトンデモ
はてサはなぜかPAC-3配備がアメリカによる北朝鮮に対する一方的攻撃のためのものだとか云々言い出して、日本の個別的自衛権の放棄を迫る始末。

ここで「はてサ」と呼ばれているのはわたしのことなんだけど*3、わたしは「PAC-3が一方的攻撃のためのもの」とは言っていないし、自衛権放棄を主張したこともない*4。言ってないことが言ったことにされている。かれの心中に存在する、わたしでない「わたし」がそう言っているのだろう。けれども、現実のわたしはそうは言っていない。

わたしが言っているのは「PAC-3を純粋な防衛用途と見なすのはナイーブだ」ということに過ぎず、かれ自身も「戦略レベルで見たら全ての兵器は攻撃にも防衛にも使える」と認めてしまったので、もはや見解の対立などどこにもありはしないのだ。この論点においては、すでに決着が付いている。

しかし、かれは論点の先読みをしてしまう。「あいつらがPAC-3の攻撃性を指摘するのは自衛権否定のためだ!」と思いこんでいるから、どうしても論点がずれてしまい、PAC-3の配備の是非だとか自衛権の是非だとかあさっての方向に話がそれてしまう。かの南京事件否定論者と同じである。

(同上)
mujinさんも、SM-3のことは全く見ずにどこまでも突っ走ってますし

「戦略レベルで見たら全ての兵器は攻撃にも防衛にも使える」のであるから、PAC-3をSM-3と言い換えても同じことだ。SM-3が「全ての兵器」に含まれないというわけでもないだろう。そもそも、わたしがPAC-3に触れてSM-3に触れていないのは、かれのエントリ中でSM-3に触れてなかったからだ。かれは「ペトリオットPAC-3は純粋な防衛用の兵器」とは言っているが、「SM-3は純粋な防衛用の兵器」とは言っていない。わたしがなぜ相手が言ってもないことに反駁する理由があるだろうか?

これも同様、論点の先読みから生じた錯覚だ。わたしの指摘は、かれの言ったこと、それのみを対象としている。かれは、わたしの言っていないことに対して反発している。わたしは、わたしのしていない発言について責任はとれない。


わたしは頭がいいので、かれの今後の言動を予測しておくと、かれはここまで言っても理解できないか、理解できないフリをするだろう。かれはとても誇りたかい性格のようだから、自分は是々非々で判断のできる利口な人間で、「あいつら」は考えることを放棄したトンデモ党派、という架空の対立構造を堅持するだろう。

うまい棒をかけてもいいよ。

*1:このブロックは最後に挿入したので文章の流れが前後してるよ!

*2:想像だけどね!

*3:想像だけどね!

*4:ついでに言うと、わたしは左翼っぽい発言もした覚えはないっスよ!左翼らしくない人間を「あいつは左翼だ」と見なして一括りにするところに、かれの党派性が現れているよん!