曹操 獅子と戦う

『水経注』に引く張華の『博物志』
魏武は馬上にて獅子に遭遇したので、(兵士たちを)これと格闘させたが、数多くの人びとが殺され傷ついた。王はそこでみずから常従の健児数百人を率いて攻撃したが、獅子は咆吼し、左右に飛びあがったので誰もが驚いた。王は、ふと一つの物体が林の中から出てくるのを見たが、それは貍に似ていて、王の車の軛の上に飛びのった。獅子がそこまで行こうとしたとき、獣はすぐに獅子の頭上に飛びのり、獅子はそのため伏せたまま立ちあがれなくなる。こうしてついに(獣が獅子を)殺してしまった。(王は)獅子を手に入れ、洛陽まで四十里のところまで帰ったところ、洛中では鶏や犬がまったく鳴いたり吠えたりしなかった。

けっきょく獅子には歯が立たず、危ういところを貍に助けられた。「貍」はタヌキのことではなく、豹(Leopard)に似た生き物であるとのこと。遼水のほとり、烏桓征伐から帰還途上での一幕。