名前が長くて覚えられません

こないだ買ってきた『西遊記』の翻訳を読んでますが、『三国演義』と同じギャグが使われてたのでメモです。「お約束」というやつでしょうか。

三国演義』第三十七回
(原文)玄紱來到莊前下馬,親叩柴門,一童出問。玄紱曰:「漢左將軍宜城亭侯領豫州牧皇叔劉備特來拜見先生。」童子曰:「我記不得許多名字。」玄紱曰:「你只說劉備來訪。」
(訳文)玄徳は荘園の門前まで来ると馬から飛びおり、じきじきに柴門を叩いた。一人のわらべが出てきて用向きを訊ねたので、玄徳は言った。「漢の左将軍・宜城亭侯・領予州の牧・皇叔劉備、先生にお目にかかりたくわざわざ参上つかまつりました。」わらべ、「お名前が長すぎて覚えられません。」玄徳、「では劉備が参ったとだけお伝えください。」

西遊記』第二十一回
(原文)大聖直至門前,見一道人,項掛數珠,口中念佛。行者道:“道人作揖。”那道人躬身答禮道:“那裏來的老爺?”行者道:“這可是靈吉菩薩講經處麼?”道人道:“此間正是,有何話説?”行者道:“纍煩你老人家與我傳答傳答:我是東土大唐駕下御弟三蔵法師的徒弟,齊天大聖孫悟空行者。今有一事,要見菩薩。”道人笑道:“老爺字多話多,我不能全記。”行者道:“你只説是唐僧徒弟孫悟空來了。”
(訳文)大聖が門前まで来たところで、一人の道士が首に数珠をかけて念仏を唱えているのが見えた。行者が「道士どの、ご挨拶申し上げる」と言うと、その道士は身を屈めて返礼し、「ここへお越しのお客さまですか?」と言った。行者が「ここが霊吉菩薩のお経を講じておるところですかな?」と言うと、道士は「ここがその場所ですが、なにかご用でもございましたか?」と答える。行者は言った。「ご老人には面倒をかけるが、私は東土の大唐陛下の弟御・三蔵法師の弟子の斉天大聖・孫悟空行者でござるが、こたびは訳あって菩薩さまにお目にかかりたく、そうお伝えくださらぬか。」道士は笑いながら「お客さまのお名前が長すぎて、私にはよう覚えきれません」と言う。「では唐僧の弟子・孫悟空が参ったとだけお伝えくだされ」と行者は言った。