呂蒙の寝言
王子年『拾遺記』から。
(原文)呂蒙入吳,吳主勸其學業,蒙乃博覽群籍,以《易》為宗。常在孫策座上酣醉,忽臥,於夢中誦《周易》一部,俄而驚起。眾人皆問之。蒙曰:“向夢見伏犧、周公、文王,與我論世祚興亡之事,日月廣明之道,莫不窮精極妙。未該玄旨,故空誦其文耳。”眾座皆云:“呂蒙囈語通《周易》。”
(訳文)呂蒙が呉に入国したとき、彼は呉主から学問をやれと勧められた。そこで呂蒙はさまざまな書物を手広く学び、とくに『周易』を重視した。
あるとき、孫策の酒宴の最中、酒に酔って寝てしまい、寝言で『周易』の一節を諳誦し、がばと飛びおきた。人々がその訳を訊ねると、呂蒙は言った。「さっき伏犧・周公・文王の夢を見て、わたしに向かって国家興亡のこと、日月広明の道について論説してくれたのだ。精緻絶妙でない言葉はなかった。深淵さのあまり主旨をよく理解できなかったので、文言を諳誦していたのだ。」