劉表の巨牛

都官従事の件で劉享のことを検索していて出てきた話。

『晋書』桓温伝
桓温が言った。「劉景升は千斤*1もの巨大な牛を所有しておって、干し草や豆を通常の十倍も食ったそうだが、重荷を背負って遠くへ行かせることでは、一頭の痩せた雌牛にもかなわなかったとか。魏武(曹操)は荊州入りしたとき、これを兵士にふるまったという。」

桓温がでまかせを言ってるのか、実際にそういう話が伝わっていたのか分からないけど、面白い話だったのでメモった。今は反芻している。

追記2月11日

世説新語』軽詆篇にも同様の記述があった。というか、たぶんこっちが元ネタ。細かな字句の違いがあるだけで大体は同じ。

世説新語』軽詆篇
桓公懍然作色,顧謂四坐曰:「諸君頗聞劉景升不?有大牛重千斤,噉芻豆十倍於常牛,負重致遠,曾不若一羸牸。魏武入荊州,烹以饗士卒,于時莫不稱快。」意以況袁。四坐既駭,袁亦失色。

『晋書』桓温伝
溫作色謂四座曰:「頗聞劉景升有千斤大牛,噉芻豆十倍於常牛,負重致遠,曾不若一羸牸,魏武入荊州,以享軍士.」意以況宏,坐中皆失色.

どちらも「千斤」になっている。『世説』の箋疏も牛の大きさにはとくに触れていない。『晋書』の斠注はどうだろう?

桓温は袁宏が虚名を博して実力を有していないことを揶揄したいので、実は「千斤」とするほうが正しく、それで袁宏の力量の小ささを言ってるのだろうか?でも、わざわざ「大牛」と言ってるのは袁宏の名声の大きさを例えようとしてるからだと思うんだけどなあ。結局、よく分からない。

*1:計算しても222kgあまりにしかならず、おそらく間違った単位が伝えられている。

検索してみたら史上最大の牛が体重2300kg、平均的な牛でも700kgとのこと。
http://big_game.at.infoseek.co.jp/othermam/largestcow.html
http://blog.livedoor.jp/thebiggest/archives/22517812.html

「千鈞」の誤りだとすれば6681kgあまりになり、話者の誇張を考慮すればこのくらいが妥当な線じゃないかと思う。