司馬仲相の裁き
webでは指摘してる人が少ないようなので、ここで書いとく。
『三国志平話』のプロローグに司馬仲相の裁きというのが挿入されている。要約すると、
- 司馬仲相が歴史書を読んでいて、秦の始皇帝の箇所で、もしオレが君主だったらもっとうまくやるのにとつぶやく。
- 天界から呼びだしを食らい、冤罪で殺された韓信、彭越、黥布の訴えを聞き、玉帝に報告する。
- 玉帝は、劉邦を献帝劉協、劉邦の后・呂后を伏后、韓信を曹操に生まれかわらせ、曹操に献帝を幽閉、伏后を殺させて復讐を遂げさせる。
- 黥布は孫権、彭越は劉備に生まれかわらせ、韓信の参謀・蒯通を諸葛亮に生まれかわらせる。
- 司馬仲相を司馬懿に生まれかわらせ、三国を統一させる。
このプロローグを踏まえるならば、曹操が献帝を逼迫するのは劉備にとっても喜ばしいことになるはずだ。ところが物語の結末部分では、
- 諸葛亮の死後、司馬懿が魏の実権を握り、曹氏から帝位を簒奪する。
- それを聞いて漢の献帝は満足し、にっこり笑ってから死ぬ。
- 司馬懿が劉備の子・劉禅、孫権の子孫・孫晧を下し、三国統一。
- 司馬懿父子の死後、劉禅の外孫・劉淵が司馬氏を滅ぼし、漢朝を再興する。
せっかく曹操が献帝をやっつけて復讐を果たしたはずなのに、また曹氏を滅ぼして献帝を喜ばせている。しかも、なんの恨みもないはずなのに、彭越の子孫と司馬仲相の子孫を競わせている。これは物語の矛盾だ。
たぶん司馬仲相のパートと本文とでは、作者が違っているんだろう。