曹操が匈奴の使者を殺した理由

世説新語
魏武(曹操)は匈奴の使者と会見するにあたり、自分の貧相な容姿では遠国を威圧することができぬと考え、崔季珪(崔琰)を身代わりにして自分は刀を持って側に控えた。会見が終わって間者に意見を探らせてみた。「魏王はどのようなお方でしたか?」匈奴の使者は答えた。「魏王の雅量は並外れておられるな。じゃが、お側で刀を持っていた者、あれこそ真の英雄じゃ!」魏武はそれを聞くと、使者を追跡させて殺した。

曹操はなぜ使者を殺したのか。

使者が帰ったならば、彼はきっと母国の者たちに「曹操は側近の武士に殺され、その武士が天下を取るだろう」と伝えるはずである。そうすると匈奴単于が魏王への臣従を取り止め、そのうえ中国の動乱を期待して反逆者に肩入れしたり、機会を窺って侵略しようとするかも知れない。そうなっては中国の損失は計り知れない。だから曹操は使者を殺して未然に動乱を防いだのである。